イメージ
イラストレーション/村上めぐみ
第2回(ガジラ通信 vol7掲載)
『ひるね姫~知らないワタシの物語~』
原作・脚本・監督/神山健治
声優/高畑充希、 江口洋介
2017年3月公開
ライター 黒住光さん

1963年岡山県生まれ。フリーライター。
映画「まほろ駅前狂騒曲」、TVアニメ「クレヨンしんちゃん」等の脚本 にも参加。

 『ひるね姫~知らないワタシの物語~Jという作品をご存じでしょうか。何と、倉敷市児島を舞台にした長編アニメ映画なのです。製作は日テレとワーナー。ちゃんとしたメジャーの大作です。そんな映画の舞台に児島が選ばれて、下津井や瀬戸大橋の風景がアニメの絵になっとるんですよ。いかにもアニメな萌え系の顔した女子高生が、高畑充希ちゃんの声で岡山弁しゃべっとるんです。これはぜひ『君の名は。』みたいに大ヒットして、「聖地巡礼」の観光客が児島に押し寄せて経済効果をもたらしてほしい。倉敷出身者としては心からそう願います。

 しかし、ちょっと気になることはある。予告編を見てもらえば分かりますが、 これ、一見平凡な女の子が夢の中で…… 「ワタシって、王国のお姫様?」みたいなお話なんです。ああ、またこのパターンかよ、と。『君の名は。』もハリー・ポッターもスター・ウォーズもみな同じ、あらかじめ選ばれし血統の者だけが主人公になれる世界。

 いや、小中学生が見る分にはいいのですよ。それは専門用語で言えば 「貴種流離譚」という民話の類型です。子供の頃は「本当の私はお姫様だったらいいのに」「本当の僕は英雄だったらいいのに」と妄想しながら育てばいいと思います。でもね、いい大人がそんなものばかり見てていいんですかね? そういう世の幼児化に反旗を翻し、選ばれざる者を描いた『ローグ・ワン』には私、ちょっと感動しましたけどね。もちろん、『ローグ・ワン』なんかよりも圧倒的に上質に普通の人を描いた、『この世界の片隅に』は死ぬほど感動しましたよ。

 そんなことを思いながらも、経済的には『ひるね姫』が大ブームを巻き起こしてくれることを全力で応援したい自分。世の中って世知辛いですなぁ。