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イラストレーション/村上めぐみ
第12回(ガジラ通信 vol17掲載)
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
監督/グレタ・カーウィグ
出演/シアーシャ・ローナン エマ・ワトソン
ライター 黒住光さん

1963年岡山県生まれ。映画『まほろ駅前狂騒曲』、テレビアニメ『クレヨンしんちゃん』等の脚本を手がける。脚本に参加したアニメ『恐竜少女ガウ子』もNetflixで好評配信中。

 コロナで延期になっていた『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』がやっと日本公開された。大号泣や大爆笑や大ドンデン返しなんて要らないんだ、そこに人間が本当に生きているように描けば、たまらなくこの世界が愛おしい思いにさせられる。そういう映画の基本を改めて思い知らされる素敵な作品です。何度も映像化されてきた古典文学『若草物語』の最新映画化だが、妙な邦題がつけられている。19世紀後半、南北戦争時代のアメリカ北部に暮らす四姉妹を描いた『若草物語』。小説家を目指し自立しようとする次女ジョーは作者ルイーザ・メイ・オルコットの分身で、今回の映画化ではオルコット自身の実人生を取り入れ脚色されているそうだ。
 今まで私は原作も映画もアニメも『若草物語』にまったく触れたことなかったので、本来はどういう話か1949年版の映画『若草物語』を見てみた。ちなみに、この49年版は私の両親が結婚前にデートで見たらしく、父が生前「(ジョー役の)ジューン・アリソンが母さんの若い頃に似ててなあ」とよく語っていた……ってのが私個人のマイライフのストーリー。今の目で見ると49年版はかなり古めかしいし、確かに『ストーリー……』と違う点もある。しかし作品の芯は変わらない。最新版の脚色に深みはあると思うが、「女の人生は結婚だけじゃない!」というオルコットの魂の叫びは昔の映画からも十分に伝わる。

 ウチのお袋はジューン・アリソンみたいな美人じゃないが、活発で利発で芸事が好きな人だったので、ジョーに重ねた親父の気持ちは分からなくもなかった。母は戦前生まれの人だから、表面上は男を立てるマナーに従う人ではあったが、自分の人生を積極的に楽しんで生きた。オルコットの時代から150年経った現代でも女性を取り巻く壁の問題は決して放置してはいけないが、それはそれとして、オルコットや母の人生が不幸だったわけじゃないよねとも思う。