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イラストレーション/村上めぐみ
第7回(ガジラ通信 vol12掲載)
『万引き家族』
監督/是枝裕和
出演/リリー・フランキー、安籐サクラ
2018年6月公開
ライター 黒住光さん

1963年岡山県生まれ。フリーライター。
映画「まほろ駅前狂騒曲」、TVアニメ「クレヨンしんちゃん」等の脚本 にも参加。

 「見てないの?」と言われるのが面倒なので、『万引き家族Jを遅ればせながら見た。見る前から予想していた通り、私の好きな映画ではなかった。だが、「これ嫌い」と言ったところで、 カンヌ映画祭パルムドールの是枝裕和監督に私が勝てるわけではない。圧倒的に負けすぎているので、負け惜しみを言う気にすらならない。ひとことだけ言っておきたいのは、この映画に対して「犯罪者を擁護するような映画は許せない」と憤ってみせる人たちとオレを一緒にしないでくれということだ。いくら何でもそんな筋違いな批判を私はしない。「犯罪者が主人公の映画なんか見たくない」という信念を持つのはその人の自由ではある。私は犯罪映画が大好きだけどね。中学の時に「カンヌ映画祭」という存在を初めて知った映画、「タクシードライバー」の主人公はストーカーで殺人者だったし。まあ、それはいいとして、『万引き家族』が犯罪者を「擁護している」と見るのは筋が悪すぎるだろう。作者は主人公を擁護するために物語を作るのではない。ただ人間を描きたいと思って描くのだ。その人間が犯罪をしていたり子供を可愛がっていたりするだけだ。

 中学の頃からずっと、私が人と語れる話題は映画のことしかなかった。「誰が何と言おうとこの映画がオレは好きだ」「誰が何と言おうとこの映画をオレは許せん」という気持ちを持つことは大切だ。大切なことだからこそ、ネットに短文で書き捨てたりしちゃいけない。友人と顔を突き合わせて何時間も語り合うべきだ。語り合って何年も後に相手の言ってたことが分かったりする。面倒くさいけど、そうやって触れ合ったり寄り添ったり向き合ったりするところに人間の「本当」がある。そういうことを『万引き家族』は描いていると思う。好きな映画じゃないけれど。