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Interview

『ガジラップ』の謎に迫る!
制作者が語る、
常識を解体する控えめな愛と大胆なG。

謎に包まれた『ガジラップ』
生みの親が重い口を開く——。

触れてはいけない誕生の秘密と
組織の闇に迫る!

そして、リリックに秘められた
黒幕の陰謀とは……。

“解体機械×HIP HOP”という、観たものに鮮烈な印象を残す『ガジラップ』。突発的なようで、なぜか妙にクオリティが高すぎるこの映像はどのようして生まれたのか。そして、なぜ、何のために制作されたのか。
CMディレクターを務めたタグチ工業 経営企画室 広報担当 半澤敦子と、コンセプト立案とリリックを担当した演劇人 半澤裕彦。『ガジラップ』生みの親2人の口からは、組織とその黒幕の「常識を解体」する「控えめな愛」と「大胆なG」の存在が語られるのだった。

左から、半澤裕彦氏、半澤敦子。

組織の黒幕は密かに笑う——

——そもそもこの企画は社内コンペで選ばれて制作が決まったと伺ったのですが、企画自体はディレクターである敦子さんの案ですか?

半澤敦子(以下、敦子):いえ、実は弊社代表の田口が「ガジラでラップをつくれ!」って昔からずっと言っていて。それで企画書にして出したら決まったんです。社長の代表はなぜかレゲェグループのFIRE BALLが好きだったり、スーパーガジラのアームの上げ下げ運動を「ヒップホップだ!」って気に入ってたりして、どうもラップをやりたかったみたいなんです。

半澤裕彦(以下、裕彦):発想がクレイジーですよね。

タグチ工業 代表取締役 田口裕一。発想がクレイジー。

——タグチ工業はユニークな企画が多いですもんね。

敦子:それにしても、「さすがにそんなものはできない!」って私もずっと聞いていないフリをしてきたんですよ。でも、今回の企画考えてるときに、なぜか急に「ガジラップ」という言葉が浮かんでしまって、そのとき裕彦さんがたまたま「フリースタイルダンジョン」にハマっていたこともあって、何となく「リリック書ける?」って聞いてみたんです。そしたら、1時間ですぐ第一稿が送られて来て……。

裕彦:仕事中で膨大な量のメールを返してる途中にピロンッとメールが来て、それを見て10分くらいでとりあえずのものを書きました。

敦子:読んでみたら、「意外といいじゃん!」ってなり、このままいただきました。

リリック第一稿。本番ではカットにされたが、「こちら」と「ガジラ」で踏んでいる。

リリックに込められた組織の世界観——

——リリックが最初にできたんですか? コンセプトを読ませてもらったら、とても意味深ですごい世界観がありそうだなと思ったのですが。

裕彦:そうですね、コンセプトは後付けで必死に書きました。なので、こっちの方が時間かかってますね。でも、タグチ工業さんのやりたいことが明確なので、リリックと世界観がどちらからともなくすり寄った感じだと思います。

社内提案時のリリックコンセプト。

——それにしても、タグチ工業の製品をそれぞれキャラクターに見立てていたり、企業PRとしてとてもよく出来てますよね。綺麗にわかりやすく、耳に残る感じ。このアタッチメントの「ト」を言わないところとか、ラップとしてもおもしろいです。

裕彦:それはもう、フリースタイルダンジョン仕込みですね(笑)。

——コンセプトの「控えめな愛(i)」というのは、“想いと苦労という人間味”だと解説がありますが。

裕彦:ものづくりの会社なのでいつもバリバリ働いてると思うんですけど、そんな中にも優しさや愛が随所にあるんです。そのことをタグチ工業の英字ロゴの「i」が小文字なっていることにかけて、リリックにしました。

敦子:本当に小さい愛ですけどねー。大きくはない。

タグチ工業ロゴ。小さいけれど、真っ赤な愛(i)。

——なるほど。では、それと対になる「大胆なG」は? スーパーガジラのG?

裕彦:スーパーガジラの事業も本業からいったら訳のわからない大胆な事業じゃないですか。「大丈夫ですか? ちょっと大胆すぎやしませんか?」っていう社内への問いかけも含めて(笑)

敦子:あの子は何かと大胆なお金がかかりますからね〜。そんなのばっかりです。

——リリック最後のコーポレートスローガン「re-create the world」の前の「終わりが始まりさ」というのは?

裕彦:「解体して、また新しいものをつくる」ことですね。建物を壊すことは終わりじゃなくて、壊した後があるから壊すんだよ、っていうのがタグチ工業さんの理念と伺いました。さらに、この業界は一般の人からすると敬遠されがちだと思うんですけど、田口代表はそのイメージも「壊して新しくしたいんだ」と言っていて。そのために製品名もキャッチーにしたり、こんなCMをつくったりと、一般の人にも取っ付きやすいようにしているって話を聞いたので。

大胆にお金がかかるスーパーガジラ。移動するだけでも、かかるらしい……。

組織内部で暗躍する職人集団——

——映像もCGが駆使されていて全体のクオリティをさらに引き上げていますよね。

敦子:あれは、グループ会社G-WORKSのCGクリエイター、猪塚の仕事です。彼女は最初、普通の事務員としてタグチ工業に入って来たんですが、あるとき履歴書を見たらどうやら設計のソフトを少し使えるらしいってことがわかって。そしたら、なぜか代表が「じゃあ設計でいいじゃん」って部署移動。さらに、何がきっかけか忘れちゃったんですけど、気づいたらCGクリエイターになってましたね。今ではタグチ工業のウェブサイトにある製品の3DCGなどもすべて担当するように……。

ガジラップ用3DCGの製作風景。元事務員作。

——そんな曖昧な感じで事務員がCGクリエイターになれてしまうんだ。楽曲を担当されたのも社員さんだと伺ったのですが。

敦子:はい、G-WORKS所属の礒﨑です。元々フリーで作曲家をしていて、タグチ工業で曲を書くのは今回で3曲目。これを機に晴れてG-WORKSに入社となりました。

——音楽をつくるためにタグチ工業に入ったんですか?

敦子:そうですね。これからタグチ工業の映像の音楽なんかを礒﨑に担当してもらうと思います。「製品一つ一つにプロモーションビデオをつくってほしい」とか代表が希望しているので、これから仕事がたくさんあると思います。でも、今はスーパーガジラの操縦の講習を受けていますよ。パソコンでの音楽制作もロボットの操縦もプログラミングなのは変わりないだろ、みたいな理由で。

——何でもありですね。ロボットアニメとかもつくれてしまうんじゃ。

裕彦:タグチ工業さんはつくりかねないですね。CGクリエイターを育てたり、グループ会社に作曲家を入社させちゃったりしてるし……。

——ラップをしている鈴鹿さんはどういう繋がりなんですか?

裕彦:彼は僕の演劇友達です。強くなりすぎず、可笑しみが残る作品になるだろうと思ったので、ラップのアングラ感もありつつ、いい意味で抜け感のある人を探していて、ちょうどいいなと。声も滑舌もいいし。

敦子:それと、顔が弊社社長の青木に似てるし……。

俳優 鈴鹿通儀とタグチ工業 取締役社長 青木善裕。

徐々に明らかとなる組織と黒幕の異常性——

——田口代表はHIPHOPが好きだったりと感覚もお若くて興味深い方ですね。

裕彦:おもしろいですよね。今回の企画もどう利益に結びつくのか全くわからない。すごく余計なお世話なんですけど、そういうことが気になりすぎてて、「本当にこのお金のかけ方で大丈夫なんですか?」っていつも聞いちゃう。

敦子:この業界は堅いので、それをユルくしたいと昔から言っていて、みんなに「とにかくおもしろいことをやれ!」と。ガジラを若い人や世間の人に知ってもらいたいという想いが強くて。

裕彦:そういったチャレンジが、今回の「解体の常識を解体」というリリックに込められていて、田口代表の気持ちを代弁しているつもりです。

——社員の皆さんにもそういった理念は浸透してるんですね。

敦子:営業の人たちなんか、日頃から「眠たくなるような会議やプレゼンは絶対ダメだ」と言われているので、過剰にギャグを盛り込んだり、編集ソフトを買ってすごい映像をつくっちゃったり、裸になったりする人たちが……。

裕彦:だいぶやられてるな……。

ロボティクスファッションクリエイター”きゅんくん”とのコラボ企画「重機少女」シリーズより。鋼鉄とかわいい。

——それが「大胆なG」の正体ですね。「控えめな愛」のエピソードってあります?

裕彦:田口代表の誕生日を毎年社員でお祝いして写真を撮ってますよね。ケーキと飾りを準備して、社員全員で代表を囲んで。すごく朗らかな写真に。

——それは、愛がありますね。

裕彦:ものづくりの人って、製品が進化するとか性能が上がるということにストイックだと思うんですけど、田口代表の場合はもっと視野が広い。製品を使って、建物を壊して、その後に新しいものが建って、という先のところまで見ているんですよ。

敦子:実際にガジラを使うエンドユーザーのお客様のことはよく考えているみたいで、考えすぎてて心ここにあらず……、という状態になっていることも多いです。ずっとガジラとマンガン(鉄の元素)のことも考えてるんです。

裕彦:元々設計者から始まって代表として営業面も自分でやって来たとお伺いしました。だから、設計とお客さんが直結しているのかな。そのためか、製品に血が通っているように感じるんですよね。

——こんなに大きい機械なのにどこか温かみを感じますもんね。

裕彦:製品に名前つけてる時点で生き物だと思ってますもんね。

——敦子さんもスーパーガジラのこと“あの子”って呼んでましたもんね。

敦子:あの子は、手がかかるんですよ〜。

まるで生き物かのような製品写真。あの子の手の先にはこの子がついている。

——このCMをつくるにあたって、田口代表から指示とかはなかったんですか?

敦子:全く。最初に歌詞だけ見せたら「裕彦め……」とだけ言って終わりました。あとで、完成品を見せたら手を叩いて笑ってましたね。

——田口代表念願の映像ができたんです……、かね(笑)。

敦子:これがテレビCMになるなんて、制作チームは誰も思ってなかったですけどね。代表は「『ピーーーー』と『ピーーーー』(岡山の有名企業)のCMに勝ちたい!」とよく言っているので、今後も制作チームのみなさんよろしくお願いします。

半澤敦子|1987年岡山県生まれ、東京都在住。タグチ工業経営企画室広報。2011年米国マサチューセッツ州・セイラム州立大学舞台芸術学部卒業(副専攻・写真)。2012年映画美学校入学より映像制作を始める。短編映画『OSANANAJIMI』が第1回クズデミー賞グランプリ受賞。タグチ工業にて、映像・写真・イラスト・アニメーションなどを中心に創作活動を行う。夢は元モーニング娘。の鞘師里保と握手すること。

半澤裕彦|1990年宮城県生まれ、東京都在住。演劇制作、文筆、映像など。2014年本多劇場制作部入社。2016年スイッチ総研所属。2017年こまばアゴラ演劇学校”無隣館”入塾。下北沢演劇祭実行委員会事務局(2015-)として「下北ウェーブ」「本多劇場祭り」などを企画。タグチ工業への歌詞提供は3作目となる。

※編集者補足:敦子は田口裕一代表取締役の次女、裕彦は敦子の夫。